あとがき

 

「枝画」の最終的な表情は、「木の枝の自然な輪郭線」と「2つのKAGE(影と陰)」であり、これは通常の絵画と異なり、作者が描いた線やKAGEではない。「枝画」での作者は脚本家と監督に留まり、「枝画」の表情を決定する役者は、木の枝による輪郭線と光による見えるKAGE(影)と隠れて見えないKAGE(陰)であり、これらの表情をもって観客の前に立つ。よって、作者は作品の最終的な表情を完成させることのできない「未完の完」として作品を完成させる。その後は作品自体が自立し、周囲の環境に合わせて表情を変化させることになる。これが「枝画」の本質であり、最大の特徴となる。

 

作品の制作に当たっては、作品のテーマの奥に潜む喜怒哀楽から派生する複雑な「心」の表現を心掛けた。すなわち、例えば微笑みと悲しみや怒りなどの相反する複数の感情を1つの作品として融合することを試みた。このため、人物画を中心とし、鳥や草木などの人物意外の作品については、擬人化して作品を制作した。

 

「枝画」が一般家庭のリビングに置かれた場合、朝、昼、夕、夜の光によって「枝画」の表情が大きく変化する。この「枝画」を見る人の心情も常に変化していることを考えた場合、「枝画」の表情と見る人の心情の2つの異なる変化の相乗効果により、「枝画」と人との対話が無限に広がることを期待している。この新たな対話が絶えず繰り返されることが作品作りの究極の目的であり、作者の願いである。

 

最後に、本書の作品をご覧いただき、その中で新たな物語や発想を誘起する作品が1つでもあれば作者としては大きな喜びである。