枝画が制作される「森のアトリエ」の作業場の中心は屋外の自邸の庭の石のテーブルであり、各種作業を行うための作業台と定盤の役割を果たす。多数の剪定した枝の中から、作品の輪郭線に適した枝を選定した後に、作品の基板に仮止めし、漆喰で本固定する作業は汚れ仕事を伴うため、アトリエは屋外が適している。
森のアトリエの周囲の庭の木は、ほとんどが落葉樹(ブナ、ソロ、ヤマボーシ、シャラなど)であり、夏は茂った葉により日陰になり、冬は落葉のため日差しが入る。
この作業場周囲の落葉樹を剪定した枝が作品の輪郭線として用いられる。これまでの作品は全て自邸の木の枝を用いて制作した。
庭造り
庭造りは小学生の時からの夢であり、家を建てた時に1-2年かけて業者の手を借りずに一人で造った。
庭造りの時期に近くのガーデンショップやホームセンターが閉店し、植木や庭石が格安で手に入れることができた。さらに、その直後に大きな花木センターが開店したこともあり、豊富な種類の中から追加で好みの庭木を比較的安価で購入することができた。これらの幸運もあり、洋風の家屋とのバランスを考えながら、避暑地の森の中での生活というイメージして庭を造った。
四季の変化が楽しめる落葉樹を中心とした雑木を8割、冬に全く緑が無くならないように常緑樹を2割とした。野生の樹木と野草を中心に、人が人工的に改良を加えた草花の姿はほとんどない。
落葉樹を中心とした自然な庭(冬)
なお、好きな花はヤマツツジの花で、新緑の若葉の中に咲く朱色の花である。人工的に改良した色でないため無理のない自然な色であり飽きがこない。リビングの大窓を通してその正面にヤマツツジを配置し、渓谷の沢を模擬した岩肌の中に咲くヤマツツジの花を一日中楽しむことができる。
下記は冬の自邸と庭のスケッチであり、ほとんど葉のない落葉樹の中に緑の常緑樹をバランスさせた。冬には少し寂しい葉のない落葉樹ではあるが、葉のない枝ぶりの風情も四季の変化を感じさせる楽しみの1つである。
この冬の時期における葉のない落葉樹の枝ぶりの曲線、リズム感、木肌の質感などの美しさが、枝を輪郭線とする枝画の誕生となる動機となった。
冬の自邸の庭
森のアトリエの四季
夏の森のアトリエ
夏は日が長く漆喰の乾きも早いことから、枝画制作の書き入れ時期となる。下記の写真は夏の日差しがある中でも、石のテーブルの周囲360度すべてには日差しが届かないように樹木が配置されている。このため、例えば午前と午後でテーブル周囲の作業位置を変えることで、一日中日陰の中で作業ができる。
なお、子供や孫達の夏休みには、この森のアトリエは自然な森の中のキャンプ場となり、バーベキューを楽しむ石のテーブルに置き換わる。
冬の森のアトリエ
冬には、森のアトリエの周囲の落葉樹はそのほとんどの葉を落とすため、晴れの日には太陽の日が作業用のテーブル全面に注ぎ、夏の日差しとは全く異なる風情となる。しかし、1~2月の寒さの厳しい時期には、北風の影響のない午前中のみが作業時間となる。この時期には日が短いこともあり作業効率は下がるため、作品数は制限されてしまう。
春の森のアトリエ
4月下旬、ヤマボウシ、ソロ、ブナ、シャラ、ヤマツツジなどの落葉樹の新緑の芽吹きが森のアトリエを彩り始めた。黄緑色の新緑の中にヤマツツジの自然な朱色が映える。爽やかな空気の中でアトリエでの作業が心地よい。
秋の森のアトリエ
10月中旬から森のアトリエ周囲の落葉樹が紅葉し始めた。玄関門扉わきのナツハゼの紅葉から始まり、シャラ、ヤマボウシ、モミジ、ソロ、ブナの紅葉へと12月下旬までの約2ヵ月半の間に落葉樹の紅葉が徐々に変化した。春の一斉の芽吹きと異なり、落葉樹の種類によって紅葉の時期が異なるため、住人としては長く紅葉を楽しむことができる。なお、この落葉樹の紅葉に添えて、11月初めからはサザンカが開花し、常緑の緑の葉の中に赤い花が瑞々しい。
森のアトリエの紅葉の主役は石のテーブルわきのソロの木であり、その紅葉は最初の緑から黄に変化し、最終的には橙に変化する。これら3色が同時に混在しながら変遷する紅葉の情景、想像してみてください。11月の終わりから12月の初めには、アトリエの石のテーブル周囲の石床と歩道に紅葉した落ち葉の絨毯が敷き詰められる。この落ち葉の歩道はわずか10mほどであるが、晩秋の落ち葉の山道を歩いている気分に浸ることができる。贅沢な時間である(落ち葉の歩道は最後の写真右)。